お盆、九州、ああ無情。8月11日。その1。

エッセイ

今はカラオケなどの入っている小綺麗なビルになっているが、19歳当時、岡山駅東口に1階は

パチンコ屋さん、その上に居酒屋などの入る雑居ビルがあった。

初めての大学生夏季休暇。岡山に帰省し、山陽を満喫。

当然課題もあったはずだし、集中すべきは学業だと思われるが、相変わらずだらだら過ごしていた。

部活の関係上、午前中はミスターUと僕の二人は先輩から義務化された筋トレ。

ひと汗かいたあとは、その後当時の流行だったカリフォニア倶楽部というビリヤード(プールバー)

に行き、昼ご飯をファミリー中華で大盛チャーハンと餃子で閉める。

そこで解散して、各々のバイト。

僕は、花屋さん、ホテルのウェイターをし、生ビールを賄いでいただき、いい気分で帰宅・就寝。

翌日またミスターとの筋トレから始まる同じような日々の繰り返しだった。

まあ、楽しかったのでよいのだが。

8月11日の夜、バイト代も出たので駅前の居酒屋 子天狗でミスターUと飲んでいた。

混みあった店内には、帰省中と思われる家族、仲間達などが大勢いて、久しぶり話でにぎわっていた。

ここで、補足。

僕とミスターU(面倒なので以下、ミスター)の関係性だが、

①まず彼が何かを唐突に思いつく(口には出さない)。

②そして、彼の中でもう勝手に決定となった時点で、話を始める。

③僕がそれに翻弄される。行動を起こすが失敗が多い。

このパターン。

その日もミスター独特の思考に何かひらめいたのだろう。

軟骨のから揚げとビールを堪能している時に

”お盆が近いからや!”

何を言っているんだろうと思いながらも、適当に相槌を打つのが僕の悪い癖。

”そうかもしれんね”

ミスターが何を言っているのか全く把握していないのにいい加減に返事。

また、つまみとビールでいい気分。静かにミスターは考え込んでいる。

店内は、ますます”久しぶりぃ”なんてう会話でにぎやかになってきた。

”江口、旅行やろ、お盆は。そやろ!気分出るやろ!”

きょとんとはしたが、意味が分からない僕はやはりいい加減に、

”そううじゃな、旅の気分になるんじゃろうな”と適当に。

おおぅと喜びの表情のミスター。その表情の意味が分からない僕。

”さすがやわ、江口。暑いときは温泉付き、ペンション!!ええやろ?”

ん?

”二泊三日、ペンションの旅。車で長距離。ええわぁ!”

え?えぇ?

何を言い出したのか何となくわかるが、あえてわかりたくない僕もいて、かわす。

”まぁ、そんなのもおろうなぁ。まぁまぁ世の中広いけぇ”

少しぶぜんとするミスター。もう彼の真意はわかった。

はい、きた!パターン②入りました。

8月11日の夜に話して、13日から二泊三日、ネットのない時代頼りは、るるぶ、のみ。

こんなことを考えているんだろうか?いや、さすがに。などと先読みはしたが、ミスターが

結論を言うまではあえて飲食に徹した。

しびれを切らしたのか、

”なぁ、江口、九州に行かへんか?車で騒いで、ペンション。良いやん!

今から二人で探して、明後日出発。おもろいやろ?”

ああ、やはりか・・。さすがに僕も時間がなさすぎ、そして計画性のなさすぎに、

”無理じゃろ?”と言ったが、もう頭の中はペンションになっているミスターは聞く耳なし。

”大丈夫やて!”

何がぁ!

根拠は不明だが、彼の中に次々と夢のようなプランが湧いているだろう雰囲気が伝わった。

”いいお盆になりそうやん、大人のお盆や”

ミスターはにやりとこちらを見た。

 

ここから、8月15日夜までの短くも長い、むちゃな旅が始まることになる。

以下次号。

 

コアラ人