”あの時は(軽トラ、珍道中②)”

エッセイ

まあ、現在も会社があるとまずいので名前は伏せるが”・・・リース”という場所だった。

工事現場に足場をリースしている会社だ。工事が終わると何千という単位で足場が戻ってくる。それを次回に貸出しやすいように上下左右を合わせて30個を1セットにまとめて、ワイヤーで固定するという作業だ。

これも慣れれば単純作業なのだが、重量もあるし簡単な機械も使用するので、当時はやっていた”テトリス”というゲーム感覚でやることができた。

これは本当にすごいなあと思うのが、現場の方の服。

作業服に着替え、結構重い安全靴、ヘルメット。ズボンは二重に履く。当日は雪と雨が降っていたので、寒さ対策の防寒具、さらに合羽。僕もミスターも着替えるのにかなり時間を要したが、皆さん慣れたもので手際が良い。口調こそ厳しいが、事故を起こさせないようにと非常に優しく、いい勉強になった。

昼休憩後、現場監督に呼ばれた。

”2人とも足場あ、なれたと思うから、あっちやってくれ”

何だろうと思うと何やら灰色の山がある。行ってみるとネジに丸い輪が巻きついたものが、大げさではなくこれも数千個あった。

”簡単よ、外して分けてくれたらいいから。それだけ。よろしく!”

監督がいなくなって、改めてそれを見たが疑問でいっぱい。何に使用したのか不明だし、外れているものをはめなおすのはわかるが、何故ネジと輪がはまった状態かわからない。

しかしそれが与えられた作業なので、座って始めた。くるくるとまわして輪を外す。分けて置く。また外す、置く。このパターン本当に飽きる。まあ今回は一人じないからいいかと思っていたが、意外に細かいミスター。

”江口、どこ置いとんねん。ネジは右、輪っかは左やろ!”

あーどうでもいい。大体向かい合って座っているわけで、彼の右は僕の左。彼の左は僕の右と逆になる。大まかに分けておけばよいのに、

”そんなんやったら、山、くずれるって。あー、ほらぁ、崩れたやん”

”うるせえぇ”

僕は無視して作業を続けた。おそらくミスターも同じではなかったのかと思うが、肉まんの時以上に寒かったのだ。しかもヘルメットの淵からぽたぽた水が垂れてくる。外せども外せども、ネジは減らない。

しかもだ!微妙に大きさの違うものが混ざっているので、うっかりはできない。

”変なトラップをしかけおって。”

追い打ちをかけるミスター。

”あー、飽きた。だれやぁこんなん、やろういうたんは。めっちゃ寒い。”

おそらく全世界の人が”おい!”と突っ込んだであろう一言。

”おめえじゃろうが”

2人とも朝の件もあるし、かりかりしていた。しかしトースター、コーヒーメーカー、炊飯器のために何とかやりきった。

サイレンが鳴って、今日の仕事終了。もはや自転車で20km近く走る気力はない。

一筋の光がさした!

”バイトの2人、今日から3日間は軽トラ使っていいからな。事故はすんなよ。”

おおお!まともな車に乗れる。タイヤは絶対にとれないはずだし、これはうれしい。ミスターとじゃんけんをして、僕が運転、彼がナビと決まった(このパターンは九州ペンション編でも出てくるが最悪の組み合わせだった)。笑顔の学生は、ささと着替えて、ザキヤマよろしく、

”あざぁああっす”とお礼を述べて、帰路に着いた。まさか珍道中が待ち受けているとも知らず。

以下次号。