まあ、現在も会社があるとまずいので名前は伏せるが”・・・リース”という場所だった。
工事現場に足場をリースしている会社だ。工事が終わると何千という単位で足場が戻ってくる。それを次回に貸出しやすいように上下左右を合わせて30個を1セットにまとめて、ワイヤーで固定するという作業だ。
これも慣れれば単純作業なのだが、重量もあるし簡単な機械も使用するので、当時はやっていた”テトリス”というゲーム感覚でやることができた。
これは本当にすごいなあと思うのが、現場の方の服。
作業服に着替え、結構重い安全靴、ヘルメット。ズボンは二重に履く。当日は雪と雨が降っていたので、寒さ対策の防寒具、さらに合羽。僕もミスターも着替えるのにかなり時間を要したが、皆さん慣れたもので手際が良い。口調こそ厳しいが、事故を起こさせないようにと非常に優しく、いい勉強になった。
昼休憩後、現場監督に呼ばれた。
”2人とも足場あ、なれたと思うから、あっちやってくれ”
何だろうと思うと何やら灰色の山がある。行ってみるとネジに丸い輪が巻きついたものが、大げさではなくこれも数千個あった。
”簡単よ、外して分けてくれたらいいから。それだけ。よろしく!”
監督がいなくなって、改めてそれを見たが疑問でいっぱい。何に使用したのか不明だし、外れているものをはめなおすのはわかるが、何故ネジと輪がはまった状態かわからない。
しかしそれが与えられた作業なので、座って始めた。くるくるとまわして輪を外す。分けて置く。また外す、置く。このパターン本当に飽きる。まあ今回は一人じないからいいかと思っていたが、意外に細かいミスター。
”江口、どこ置いとんねん。ネジは右、輪っかは左やろ!”
あーどうでもいい。大体向かい合って座っているわけで、彼の右は僕の左。彼の左は僕の右と逆になる。大まかに分けておけばよいのに、
”そんなんやったら、山、くずれるって。あー、ほらぁ、崩れたやん”
”うるせえぇ”
僕は無視して作業を続けた。おそらくミスターも同じではなかったのかと思うが、肉まんの時以上に寒かったのだ。しかもヘルメットの淵からぽたぽた水が垂れてくる。外せども外せども、ネジは減らない。
しかもだ!微妙に大きさの違うものが混ざっているので、うっかりはできない。
”変なトラップをしかけおって。”
追い打ちをかけるミスター。
”あー、飽きた。だれやぁこんなん、やろういうたんは。めっちゃ寒い。”
おそらく全世界の人が”おい!”と突っ込んだであろう一言。
”おめえじゃろうが”
2人とも朝の件もあるし、かりかりしていた。しかしトースター、コーヒーメーカー、炊飯器のために何とかやりきった。
サイレンが鳴って、今日の仕事終了。もはや自転車で20km近く走る気力はない。
一筋の光がさした!
”バイトの2人、今日から3日間は軽トラ使っていいからな。事故はすんなよ。”
おおお!まともな車に乗れる。タイヤは絶対にとれないはずだし、これはうれしい。ミスターとじゃんけんをして、僕が運転、彼がナビと決まった(このパターンは九州ペンション編でも出てくるが最悪の組み合わせだった)。笑顔の学生は、ささと着替えて、ザキヤマよろしく、
”あざぁああっす”とお礼を述べて、帰路に着いた。まさか珍道中が待ち受けているとも知らず。
以下次号。